「いま、大丈夫か?」と聞けない男
日曜日。今日も晴れ。
目覚ましは7時にセットしていて、「午前中に、頑張ろう」と意気込んでいたのに、インターホンのチャイムで目が覚めると10時だった。なんということか。たっぷり寝過ぎではないだろうか。夫がふるさと納税で頼んだ冷凍餃子が、こちらもまたたっぷり届いた。夕飯を作る元気がないときに食べられるから、毎年とてもありがたい。それにしても寝過ぎてしまった。
日記配信をして、締切が近い原稿に取り組む。たった「ひとこと」に悩み、うーんと唸る。文字数の少ないものに関しては、まだまだ納得のいくものを短い時間で構築することが難しいなあと思う。一方で「ひとまず書き上げる」という作業に関しては、普段7,000文字ほど書いているわたしにとってはあまりにも呆気なくて、努力して慣れることができれば、誌面の寄稿仕事はどんどん進めていけるのではないかなあと思う。たくさんお仕事をいただいているから、順に丁寧に、それでも筆の早さも意識しながら、取り組んでいきたい。
もうひとつの原稿にも目を通す。こちらはかなり文字数が多い。「ひとまず書き上げる」という作業はできたけれど、これからの手直しにかなり努力と時間が必要だろうなあ、と震えている。日々の執筆時間の捻出に、もっと本気で取り組まねばと改めて気持ちが引き締まった。
毎日、健やかにパワフルに執筆していきたい。
そして夫と約束していたものだから、ジュースとポップコーンを用意して、Netflixの『ラブ上等』を一気に最後まで観ることに。前にも紹介した、ヤンキーの男女たちが血の気たっぷりに繰り広げる純愛リアリティショーである。こういったコンテンツは、予想外のことや奇抜な展開が起こるたびに夫と顔を見合わせ、あれこれと話しながら観るのがやっぱりおもしろい。3時間程度を経て、「なるほどなあ」と拍手をして観終えた。誰かの恋愛をこんなに応援することができるなんて、すごく嬉しい体験だ。そして、夫から(仕事柄)、「いかに地上波では制作できないコンテンツであるか」「退学者を出すことの意味」などを改めて説いてもらって、「なるほどなあ」とまた深く唸る。
「人気を博しているコンテンツは、目を通さねば」と観始めたものだったけれど、良い体験をさせてもらった。
夕方は吉祥寺へと出かけて歩き回った。
夫にバレンタインのプレゼントとして、新しい「名刺入れ」をプレゼントすることを約束したのだけど、夫の形状に関するこだわりがとてもとても強く「そんな名刺入れ、この世にないで!」とわたしは困惑しているところなのだ。先週は渋谷を見た。今週は吉祥寺で探す。
すると途中で、父から着信があった。なにか大事な用事かと思い、「もしもし」と通話してみると、「いま、大丈夫か?」「いま、家か?」などとまったくたずねることもなく、「俺はいまここにいる」「明日は誰それとあそこへ行く」「なぜならしばらく時間が取れていなかったからで、それはとても久しぶりである」などというマシンガントークが始まった。
もしも、わたしの作品がいつの日か「実写化」なんてされることがあったなら、父は明石家さんまさんに演じてもらう他ないと思う。(夫は「宮川大輔さんに老けメイクをしてもらうのはどうか」という案もくれている)ともかく「話の止まらない関西まる出しのおじさん」なのだ。ミスチルも驚くほど、とどまることを知らない。ずいぶん長く話されてしまい、「ごめん、いま外で、それも商業施設の中で買い物をしてるから、要件だけにしてもらいたいねんけど……」となんとかようやく伝えると、「はあ、そうかそうか!ははは!」と笑う。何がおかしいんだ。名刺は決まらないし、立て板水のごとく父の近況を聞かされ、わたしは大変に疲れた。
「このままでは帰れない」と、お気に入りの文具店「36 Sublo(サブロ)」をたずねて可愛い文具をたくさん眺め、大好きな「手紙舎」の吉祥寺店で買い物をさせてもらって、たぷんっと心が潤った。
そして夫の「兆しが見えてきた」「理想の名刺入れに近づいている気がする」という、よくわからない前向きな発言もわたしを勇気づける。
明日は仕事を頑張ろう。今週の後半から取材出張で長く不在にしてしまうから、そのぶんもめいっぱい頑張ろう。良い月曜日にできますように。そして、バレンタインデーまでに夫の良い名刺入れが見つかりますように。この世に彼の理想の名刺入れが存在していますように。できれば、父がもっとコンパクトに話せますように。「いま、大丈夫か?」と聞ける男になれますように。
わたしの願い事は、年始に考えていたよりずっとずっと増えていた。
※これはエッセイではなく、あくまで紙に書いているつもりの「日記」です。
すでに登録済みの方は こちら