ポロポロしてはいけません。
ベランダに出ると、昨日のことが嘘みたいによく晴れている。照っている。雪もまったく日の当たらない日陰にほんの少し残っているだけで、道路は濡れて光ってきらきらとしていた。
早起きをしたのだけれど、日報と日記を書いたところで「なんだか調子がおかしいな」とちょっとソファで横になったら、そのまま2時間も眠ってしまった。週末に頑張りすぎて少し疲れてしまったのかもしれないし、もっと違った理由かもしれない。
全部全部、夢ならいいのに……とどうしても思ってしまう。
今日は大仕事が2つある。ひとつは、まったく新しい書き下ろしの長編エッセイを1から書くこと。構想がバッチリ出来上がっているものではないから、まずはどんなふうに描(えが)いていくか……というところから練っていかなければいけない。もちろん今日中にすべて書き終えられるとは思っていないのだけれど、全体がぼんやりと見えるぐらいのところまでは持っていきたいなあ、と思っている。そして、もうひとつはゲラのチェックだ。何時間かかるだろう。気を抜けない作業なので、しっかり時間をかけて丁寧にやらなければなあと思う。
実はこのところ、金曜日、日曜日、月曜日、そして明日の火曜日と、急なやむを得ない事情で(お相手の方々はまったくもって悪くないのだけれど)4件の予定がそれぞれ立ち消え、すべて翌週や再来週にまわり、予定がひっちゃかめっちゃかになっている。そして、夫までも「今晩の予定が変わった」と言い出して、なんだかどうしようもなく噛み合わない。(とても大袈裟だけれど)上手く世界とつながれない、そんな心地がしてさみしく思っている。準備していたものも、また改めて準備することになってしまうけれど、雪やご体調のせいだからお相手は本当に悪くなくて、本当に気持ちの行き場がなくて。ただ部屋でひとりそれを抱えている。胸にすごくすごく小さな穴が空いてスースーと隙間風が吹く。
途中で30分だけ散歩をしたけれど、ゲラの作業が気になって気になってしょうがなかった。こんなに太陽の光が心地いいのに。こんなに空が眩しいのに。わたしは、とても勿体ないことをしているなあと思いながら、そそくさと家に戻った。ダイアンのPodcastをもっと聴きたかった。
そして今日の結果はといえば、本当に散々だった。
書き下ろしはあまり上手く進まず、突発的な対応が嵩み、ゲラは最後まで見通すことができぬまま、また提出済みのお気に入りに思っていた原稿がなんだか不味いものであるようなのだけど、その理由がどうにもよくわからず、もうボロボロになって、つらくてキッチンでわんわん泣いてしまった。飲み込むことのできない報道の数々に辛くなってしまっていることも、きっとあるんだろうなあ、と思う。平和を祈っている。
そして大切なメールを読んでいる最中に夫が帰ってきたものだから、「いま少し大事なものを読んでるから、黙っといてな」と言った。それだのに「ゆかちゃんのために、クロワッサンとね、春巻きとね、カヌレ持って帰ってきたよ」と話しかけてくるものだから、「一瞬、黙ってって言ったやんか」と言うと、しょげて夫は寝室のベッドでひとり春巻きを食べていた。「ごめんね」と言いに行ったらベッドで春巻きなんかを食べているから「そんなポロポロこぼすもの、ベッドで食べたらあかんやん」と言ってしまって、夫は「邪魔しないように、ここで食べてたのに……」とまた悲しそうな顔をする。
それでもわたしは思う。ベッドで春巻きを食べるのはあかんやん。
なにもかも投げ出したくなる、逃げ出したくなる、そんな日もたまにある。ベッドで食べてはいけないものも絶対にある。
春巻きとクロワッサンと信玄餅だ。
※これはエッセイではなく、あくまで紙に書いているつもりの「日記」です。
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